Ellysse Dick(Reality Labsポリシーマネージャ)、Jacklyn Doig-Keys(安全に関するポリシーマネージャ)
Metaは今年、Metaアバターをアップデートし、Facebook、Instagram、WhatsApp、Meta Horizonなど、バーチャルな体験や複合現実体験での自己表現の選択肢を増やしました。この次世代のアバターでは、新たな独自のスタイルが追加されたほか、自己表現の幅が広がりました。
改めて説明する必要はないかもしれませんが、アバターとは、オンラインでのコミュニケーションに使用する自分のデジタル表現のことです。未来のメタバースでは、そのアバターが、アプリや体験にまたがるアイデンティティの核になります。そこでMetaは、一人ひとりの創造性、興味・関心、アイデンティティをもっと簡単にアバターに反映できるようにしたいと考えました。
Metaとしては、アバターで本当の自分を表現するのに必要なツールを用意したいと考えています。しかし、アイデンティティの側面によってはバーチャル空間での安全やプライバシー、体験全般に関わる可能性があります。利用者自身だけでなく、周囲の人も含めてです。Metaは、この点もないがしろにしたくありません。そうした思いから、メディアと若者の心身の健康が専門の研究者であるRachel Rodgers博士の協力を得て、若者のほか、デジタル空間における安全の専門家やデジタルウェルビーイングの専門家に相談しながらこのガイドを作成しました。このガイドでは、身の安全に注意し、周囲を尊重しながらアバターを通じてアイデンティティを追求する方法について、お子さん向けのアドバイスと保護者向けのガイダンスを紹介しています。
このガイドが、バーチャル空間での自己表現についてお子さんと保護者が一緒に学ぶための一助となり、アバターで安全に交流するためのツールになることを願っています。このガイドで基本を確認し、自分の想像力を羽ばたかせて、本当の自分が輝く「STAR」なアバターを作ってみてください。
どうすれば「STAR」なMetaアバターを作れるのか、ここで少し考えてみましょう。「STAR」とは、「Safe (安全を確保する)」「Thoughtful (思慮深く振る舞う)」「Authentic (本当の自分を表現する)」「Respectful (他者を尊重する)」の頭文字を取った言葉です。
おそらくすでにご存知のとおり、それぞれのアバターの外見には明確な意図があります。外見で自分の個性をアピールする人もいれば、アバターの見た目を何かの表現の型にはめる人もいます。
アバターは、その人の内面の自己、身体的特徴、理想が組み合わさったものであることがほとんどです。現実世界では必ずしもかなわない自己表現をするのに、非常に便利な手段になりえます。
自分の個性やアイデンティティのどこが大切だと思うか。まずはそのことをアバターを通して考えてみるのがおすすめです。そうはいっても自分ではなかなか分からないかもしれません。自信がないときは、いつでも親や信頼できる大人に相談してみてください。
オンラインで自分のプライバシーを守ることについては多くの人が気をつけていると思います。気をつけるべきなのはSTARなアバターでも同じです。アバターは写真に代わる楽しい機能で、見た目はアニメ風ですが、自分を表している点は変わりません。
オンラインでは、自分についていろいろと明かすことができます。自分がどんな人で、何が好きで、どんな印象を与えようとしていて、どのコミュニティに属しているのか、などです。
アバターでも同じことができますし、他人のアバターを見ればそうしたことが読み取れます。例えば、好きなチームやバンドのシャツを着れば、自分はそのチームやバンドのファンだと公言することになります。アバターが伝える情報はそれだけではありません。アイデンティティのもっと大切な部分が伝わることもあります。自分の人種、民族、文化、性別、ジェンダー表現、能力、宗教などです。
リアルやバーチャルでの自分の姿は、コミュニケーションツールのようなものです。ちょうど自分の声のように。ということは、声と同じように注意して扱わなければなりません。
自分のアバターが、無意識に社会的なステレオタイプに根ざした受け止められ方をすることもあるでしょう。ステレオタイプ的な判断は、人間が周囲の情報を素早く処理しようとして行う思考のショートカットです。これは差別的になることもあれば、正確でないこともあり、必ずしも自分の役に立つとは限りません。他人のアバターの表現が持つ意味を決めつけることはせず、どうしてその表現を選んだのか聞くようにしましょう。また、自分自身について的外れな先入観を持たれる可能性もあるということを、心に留めておきましょう。
体型や顔、服装といったアバターの外見は、見かけの年齢に影響することがあります。例えば、選んだ外見によっては実年齢より上に見られたり、下に見られたりするかもしれません。
アバターを作るときは、自分の何を人に見せたいのか、どう見られたいのか、どんな人と交流したいのかを考えましょう。
オンラインを含め、どのような空間でも、自分の外見がどのように見られるのかを考えることが大切です。例えばアバターのデザインの仕方によっては、実年齢より上に見られたり、自分の年齢に合っていない接し方をされたりする可能性があります。それが居心地のいいものであるとは限りません。自分のどんなところをシェアしたいのか、それはどのように受け止められる可能性があるのか、その両方を考慮しましょう。
考えるべきポイント:
オンラインで自分や友達の安全を守るために、すでに自分なりのやり方があるという方も多いと思います。ここで覚えておいて欲しいのですが、「本当の姿を見せて」と言われても、安易に写真を送らないでください。誰とつながることになるのかをよく考えて、これまでに身につけてきたオンラインでの安全な振る舞い方を実践しましょう。自信がないときは、信頼できる大人に相談してください。
アバターによって自分のことがどう伝わるのか、アバターが誰に見られるのかを考えましょう。
バーチャル空間は、楽しい時間を過ごしたり、人と会話したり、日々のことをシェアしたりする場所です。人は現実世界では、「学校」「家族との夕食」「職場」「友達との集まり」など、シーンによって装いを変えます。これと同じように、バーチャルな空間でもさまざまな「自分」になれます。個々の場面でどんな外見をしたいのか、それはどうしてなのかを考えることが大切です。
その時々で選ぶアバターのスタイルは、場面によってはふさわしいこともあればそうでないこともあります。かしこまった場には上品なアバターで行きたいでしょうし、ゲームに参加する場合は遊び心のあるアバターで行きたいかもしれません。
Metaアバターは、いつも同じものを使うことも、アプリや場所ごとに専用のものを使うこともできます。FacebookやInstagram、WhatsApp、Meta Horizonで交流する人々のことを思い浮かべてみましょう。そこでは自分のどの部分をシェアし、どの部分を秘密にしたいでしょうか。
アバターを複数作れば、さまざまな気分を表現したり、アイデンティティの中で光を当てる部分を変えたりできます。
考えるべきポイント:
アバターは、一から作ることも、もっと自分に似るようにセルフィーから作ることもできます。
アバターのいいところの1つは、空間ごとの自分の見せ方を自分で決められる点です。さまざまな顔のパーツ、髪の毛、メイク、服装を、誰でも試せます。こうしたオプションは、自分の特徴を現実世界よりも輝かせるのに便利です。
外見を変えてみたり、その外見で自分がどう感じるかを確かめたりするのも、楽しく簡単にできます。現実世界の見た目が「本当の自分」をよく表していると感じるときもあれば、現実世界では「自分のこういう部分が輝いていない」と感じるときもあります。アバターなら、外見を内面の自分にもっと近づけられるかもしれません。
アバターは、「私は自分のことをこう見ていて、人にはこう見られたい」という自己像に近づけてデザインできます。自己像は場面によって変わるかもしれません。時とともに変わっていくかもしれません。感じ方は日によって異なります。誰もが皆、変化し、成長しているのです。さまざまなオプションを試して本当の自分らしく感じられるものを探ってみてください。リアルの自分に似るかもしれませんし、まったく違う自分になるかもしれません。自由に実験してみましょう。
現実から離れたり、遊んだりするのもおすすめです。例えば、髪の色によっては周りの人よりも現実離れした見た目になるかもしれません。そうした選択をすれば、リアリズムではなく遊び心を表現できます。あるいは、ロボットや好きな映画のキャラクターなど、想像上の存在になることもできます。とはいえ、必ず使う場面はわきまえてください。
現実世界での知り合いにアバターを見られたときにどんな反応をされるかを、気にするようにしましょう。現実とバーチャルで外見が違っていると驚かれるかもしれません。オンラインで普段の自分とはかけ離れたアバターを使っているときに、現実世界の知り合いと会ったらどんな会話をするか、考えておくことをおすすめします。
反対に、あなたのアイデンティティについて、バーチャルの姿以上のことは何も知らないという人もいます。そうした人にどのように受け止められるかについても考えておきましょう。自分が望むどんな見せ方もできますが、さまざまな場所に足を踏み入れるにあたっては、よく考え、備えておくことが大切です。
「A」は「Authentic (本当の自分)」の「A」ですが、「Aspirational (理想の自分)」の「A」でもあります。このどちらも追求できるのがアバターです。
自分の実際の見た目から離れて、アバターの見た目を「よくしたい」という人もいるでしょう。アバターなら、いろいろな見た目を楽しく試せます。ただし、注意が必要です。「見た目をよくしたい」と考えるとき、その元になっているのは、有名人やアスリート、インフルエンサーの写真であることがほとんどです。そうした写真には多くの場合、現実世界ではほとんどの人にとって不可能な、理想の姿が写っています。
ここから、現実ではほぼかなわない「ステレオタイプ的な理想像」が生まれます。そうした理想像は、リアルに見えても非現実的であることに注意しましょう。自分が推している有名人でさえ、カメラの前以外では別人のように見えるはずです。実際、編集ツールの進化が進むにつれて、オンラインと現実での見た目の隔たりは大きくなっています。オンラインで見かける他人の姿は、その空間での「こう見られたい」を表現したものにすぎません。実際の見た目と同じとは限らないことを覚えておきましょう。
アバターにはカスタマイズオプションが豊富です。さまざまな選択肢を試して、本当の自分を輝かせるものを作ってみましょう。
アバターでは、顔、目、鼻の形や大きさを変えたり、体の大きさを変えたりできます。こうしたツールは実際の見た目を改変するのにも使えてしまいますが、「理想像」は現実にはありえません。そのことを心に留めておきましょう。どの形も、どのパーツも、素敵なのですから。
感動をくれる人には、いろいろな体型の人がいます。自信は内面から生まれるのです。
美は、芸術や文化、文明の中で、昔から大きな価値を持っていました。とはいえ、「どうして自分は『見た目をよく』しようとしているのか」を考えてみてください。その見た目で魅力的になるというのは本心からの考えでしょうか。自分が何を魅力的と考え、外見をどのくらい重視しているのかについて、どんなメッセージを発信することになるでしょうか。
外見に不満を感じている友達がいたら、人がオンラインに載せている姿は現実の姿とは違うことを思い出させてあげてください。フィルターなどのツールを使っている人は多くいます。信頼できる大人に悩みを相談するよう背中を押してあげましょう。
感動をくれる人と一口に言っても、体型や体の大きさ、形、顔などのパーツ(髪の毛、肌の色、目や鼻の形など)は十人十色です。
アバターを作るとき、自分にとって大切なこと、自分が素敵だと思うことは何でしょうか。自分の美意識に正直なアバターになっているでしょうか。
考えるべきポイント:
アバターの選択肢の広さに自由を感じることもあるでしょう。しかし、オンラインとオフラインでの自分の見た目について複雑な気持ちが生まれることもあります。誰かに相談したくなったら、信頼できる大人に話してみましょう。
アバターの種類の多さは、現実世界に暮らす人の数をも超えます。さまざまな選択が可能で、それを称えることができるのが、アバターの素晴らしいところです。実際、Metaアバターではパーツの組み合わせによって100京以上のアバターを作れます。
バーチャル空間にいる誰もが、アバターは自分の分身だと感じています。その世界では、誰がどんな見た目をしていても、尊厳と敬意を持って接しなければなりません。
それぞれの集団の中で文化的な意味合いが強い見た目もあります。それは本当の自分や価値観を表すのに便利な一方で、ほかの人にとって大切な意味を持つパーツを選ぶことが失礼な印象を与えるリスクもあります。たとえそういう意図がなかったとしても、です。
アバターに使っているパーツが人によって異なる受け取られ方をする場合もあります。誤解は常に起こり得ます。特に誤解が生じた場合には、それぞれのシンボルが持つ意味を人に尋ねてみるといいかもしれません。
オンラインでの交流で他人の自己表現を見たとき、自分はどんな思い込みをするでしょうか。その思い込みは相手への接し方に影響するでしょうか。自分で思い込む前に、いつでも遠慮なく尋ねるようにしましょう。
現実世界の自分とは違う見た目のアバターにする場合は、現実にそのような見た目をしている人について自分がどのようなメッセージを発することになるかを確認しましょう。大人や友達に「これって誰かの失礼にならないかな」と聞いてみてください。
考えるべきポイント:
決めつけはよくありません。アイデンティティについては必ずその人に尋ねるようにしましょう。バーチャル空間で失礼な行為を見かけたら、信頼できる大人に協力を求めてください。バーチャル空間には、配慮ある行動を求めるルールや、違反者を報告できるツールが用意されている場合があります。
アバターを作るときは、よく考え、自分の価値観やコミュニティの価値観に沿うようにしましょう。
質問する: お子さんにアバターについて聞く:
質問する: 「アバターのことを聞いてもいいかな。人に自分のどんなところを伝えようとしているの?」
質問する:「新しいアバターの評判はどう?その友達たちと接するアプリで、どうしてそのアバターを選んだの?」
関与する: お子さんがアバターを作るときは、力を貸しましょう。保護者も自分のアバターを作り、お子さんに作成を手伝わせてみてください。一緒にいろいろな機能を使ってみて、お子さんが自分の見せ方について考えられるようにしましょう。
関与する: テーマやムードをお子さんと選び、それを伝えるアバターを一緒にいくつか作ってみてください。現実世界の自分に似せるならどうするか、似せないならどうするかを、協力し合いながらやってみましょう。現実と違うパーツを選ぶとどう感じるかを互いに聞いてみましょう。
お子さんには、人のアバターを見た目で決めつけないように教えてください。どうしてその見た目にしたのかを相手の人やプレイヤーに尋ねるように言いましょう。
関与する: 「あのアバターについて聞きたいんだけど、ほかに解釈の仕方はあると思う?」などと、お子さん以外の人のアバターについてどんな意味合いがあるか、お子さんに質問してみましょう。
他人が使っている文化的な記号やシンボルについて、相手に配慮した質問の仕方の手本を見せましょう。「あなたのアバターのその○○、いいですね。どういう意味があるのか聞いてもいいかな」。
コントロール: Metaでは、アバターを使う可能性がある体験の設定を、保護者やお子さんが管理できるツールを用意しています。自分の家族にふさわしく、安全な環境を作るのに役立つ設定を、お子さんと一緒に探してみてください。
10代は、アイデンティティや個性が作られていく時期です。人格が固まっていくときに自分のさまざまな面を取り上げてあれこれ考えるのは、珍しいことではありません。
バーチャル空間には、現実世界にはないようなコミュニティ規則や報告ツールがあり、規則に基づく措置があります。バーチャルな体験は、お子さんが自分自身や性格のさまざまな部分を安全に試してみるのにちょうどいい場所かもしれません。
とはいえ、いじめや嫌がらせ、理想を詰め込んだアバターを見て自分の外見に対して芽生えた不満など、お子さんと難しい話題について話し合わねばならなくなる可能性には、備えておく必要があります。